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2011年 01月 29日
Ⅰ. テーマを決定し、文献を読む 3. 第一次テーマの決定と文献目録の作成―3年生秋まで 3年生の秋までに卒論の第一次テーマを決める。3年生のゼミで自分の報告発表があるはずだから、それを利用する。その際、教員の助言をかならず受け(先輩院生もいれば相談するとよいだろう)、実現可能なテーマ設定にする。自分で考えたテーマはたいてい大きすぎ、一番最近読んだ本に引きずられる傾向がある。客観的に判断できるのは、専門知識のある第三者である。 テーマ決定と同時に、ゼミでの報告発表までにそのテーマの文献目録を作成し、その文献の所蔵先まで調べておくこと。1年生の時に、歴史学研究入門で「文献悉皆調査」をしたはずだ。今度は量よりも質が問題である。テーマに密接する文献目録を作らなくてはならない。西洋近現代史に関して、文献目録作成に役立つもの(80年代以降)を以下にあげる。 ・『史学雑誌』毎年5月号の「回顧と展望」(前年度の日本での研究について論評がある)。 ・史学会篇『日本歴史学界の回顧と展望』山川出版社、1987-88年、全25巻(上記の「回顧と展望」の1949~85年を項目別にまとめたもの。一昔前の研究史把握に役立つ)。 ・『史学雑誌』各号巻末の文献目録(西洋史は1,5,9号、日本の出版物に限定)。 ・国際歴史学会議日本国内委員会編『日本における歴史学の発達と現状』I~V、東京大学出版会,1959,64,69,76,80年;VI~Ⅶ,山川出版社,1985,89年。 ・社会経済史学会編『社会経済史学の課題と展望』有斐閣、2002年(学会70周年記念、10周年ごとに出ている)。 ・望田幸男他編『西洋近現代史研究入門』名古屋大学出版会、2006年(第3版)。 ・近藤和彦編『イギリス史研究入門』山川出版社、2010年。 ・清水智久他編『アメリカ史研究入門』山川出版社、1980年(改訂増補版)。 ・西川正雄編『ドイツ史研究入門』東京大学出版会、1984年。 ・山川出版社の『世界各国史』『世界現代史』『世界歴史体系』シリーズの巻末文献目録。 ・個別研究書の巻末の関連文献目録(役立つがその本以後の文献がカバーされない)。 ・各種の歴史雑誌(『歴史学研究』『社会経済史学』『史学雑誌』『歴史評論』『西洋史学』等)にある書評と研究動向。 ・先輩の卒業論文・修士論文で使われた文献目録(教師に相談してみるとよい)。 今回は、1年生の時の悉皆調査と違って、その文献の所蔵先まで調べる。というのはすぐに文献を入手して読むからである。上智大学にないからといってあきらめてはいけない。日本で公刊された書籍は基本的にすべて国立国会図書館(NDL)にあるので、パソコンからNDL-OPAC(http://opac.ndl.go.jp)に入って書籍や雑誌論文が検索できる。日本の大学図書館に書籍があるかどうかは、国立情報学研究所(NII)の情報サービス、NACSIS-Webcat(http://webcat.nii.ac.jp)でわかる 。NIIの論文検索はCiNii(サイニー)(http://ci.nii.ac.jp)と呼ばれ、よく使われている。他にも検索サイトは多い。日進月歩なので、図書館研修や図書館ニュースを活用し、自分に必要な文献の所在先をつきとめておこう。西洋史の学生は邦語文献だけでなく、欧語文献もしっかり調査しておくこと。後者の方が重要になるからだ。 4. 文献を集め、読み、テーマを絞り込む―4年生はじめまで 第一次テーマの文献目録にしたがって文献を収集しつつ、同時に文献を読んでゆく。他大学の図書館を利用するには紹介状が必要である。絶版でなければ購入できる(図書館に購入希望も出せる)。洋書もamazonなどで簡単に発注できるし、船便でも1~2ヶ月、航空便は1週間、EMSという特急便なら3日ぐらいで着く。雑誌論文は、オンライン印刷や電子ジャーナルが増えて、非常に便利になった。とはいえ、古いモノになるとまだまだ入手できないモノも多い。専門の研究者はたいてい関連文献を持っているので、相談すると、場合によっては貸してもらえるかもしれない。一般に、文献の入手は時間がかかる。3年生の後半からやったほうがよい。東京の真中にある上智大学の学生は文献調達にはかなり有利である。国立国会図書館や東京大学の図書館がすぐ近くにあるし、学内に丸善がある。 3年生の冬から4年生はじめまでの読書は、テーマを絞り込むための読書なので、まず一番新しいしっかりした論文や研究書を読むとよい。研究史の流れが理解できるし、そこにある註や参考文献表を手がかりにできる。そしてテーマを絞り込む(第二次テーマ)。4年生のはじめのころ各ゼミで「卒論構想発表」があるので、この機会を利用して第二次テーマへと絞ってゆくとよいだろう。 テーマの絞り込みに際してテーマ側の条件と自分側の条件がある。テーマ側の条件は、「史料があるかどうか」と「先行研究があるかどうか」、つまり一言で言えば「文献が十分にあるかどうか」である。外国史の場合、第一次史料が完備していることは少ないが、史料集や付録にドキュメントを載せている研究書はある。初学者は先行研究があまりに多いとやる気を失いがちだが、先行研究(歴史学の文献でなくてもよい)が無いテーマは、卒論レベルでは無理である。自分側の条件は「必要な語学力があるか」と「必要な知識はあるか」である。自分の選択した地域の語学ができるかどうかでテーマは左右される。それが特殊言語である場合、最低限、媒介言語たる英語で本が読め、第二外国語で論文が読めるようになっておくことが必要である。「必要な知識」というのは、たとえば経済史をするのなら経済学の基礎、選挙分析だと統計学の基礎、科学史だと理科の知識が必要になる、というようなことである。テーマを扱うのに必要な一定の理論は習得しなくてはならない。 5. 文献の精読とメモ―4年生秋口まで テーマを絞り込んだ上で文献の精読に入る。今度はしっかりメモをとりつつ読むので、かなり時間がかかる。論文執筆時に使えるように、出典(文献名だけでなく何ページかも必要)を記載しておくこと。引用か自分の要約かが区別できるような書き方を工夫する(ボールペンの色を変えるとか引用はコピーを貼り付けるとか)。何にメモをとるかは人さまざまである。ノート・カード・ルーズリーフ・パソコン等々、それぞれに一長一短があるので、自分で創意工夫する。規格はそろえたほうが使いやすい。紙はケチらないことである。 文献の内容のメモだけでなく、読んでいるときにいろいろな思いつきが浮かぶが、これは「思いつき手帳」みたいなものを作って控えておくと、構想や執筆の時にかなり役に立つ。この精読の段階でテーマの再修正が行われることが多いが、面倒がらずにテーマの絞込みは何度も行なおう。 ともかく、文献の精読はもっとも根気のいる作業であり、これができていないと卒論は絶対書けない。逆にこれがきちんとできていれば、執筆時につまずいてもなんとかなる。夏休みの終わり頃ゼミ合宿があれば、精読した成果を「読書報告」という形で発表させてもらったらどうだろうか。 現実には、3の「第一次テーマの決定」から5の「文献の精読・メモ」まで、文献収集・読書・テーマの修正とは、同時平行的に行われる。また、たいていの場合時間が足りず、4の「全体像をしるための読書」と5の「メモをとりつつの精読」とは、前後したりもする。ただ「どうせ予定通りにいかないから計画はたてまい」では失敗する。計画は立てておくこと。卒論は決して一夜漬けではできない。一年以上かかるプロジェクトである。
by history-sophia
| 2011-01-29 17:54
| 卒論の書き方
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