2014年 08月 02日
川村信三 教授
関西学院大学文学部史学科・学士号 関西学院大学大学院史学専攻・修士号 上智大学大学院哲学専攻・修士号 教皇庁立グレゴリアン大学神学部・神学士号 米国ウェストン神学大学院・神学教授資格 米国ジョージタウン大学大学院・博士号(歴史学)
M.A.in History, Kwansei Gakuin University Graduate School M.A.in Philosophy, Sophia University Graduate School S.T.B.in Theology, Pontifical Gregorian University, Rome. S.T.L.in Church History, Weston Jesuit School of Theology, Cambridge. M.A. Ph.D. in History, Georgetown University.
イエズス会の会員(司祭)です。イエズス会入会前は、ごく普通の史学生として西洋史分野で修士まで進みました。イエズス会に入ってからは、ヨーロッパ教会史を主に学び、博士論文の専門分野として16世紀のイエズス会宣教史に絞りました。ヨーロッパのキリスト教史を学ぶには神学や哲学などの知識も必要でした。ローマのグレゴリアン大学で学んでいるとき、アメリカのボストン(正確にはケンブリッジMA)に歴史学者ジョン・オマリー教授がいて、宗教改革時代の第一人者だと知り、博士の前段階の指導をお願いしました。その後、博士号では、イエズス会・ヨーロッパ・日本史の三分野に精通する指導者を探し、結局、ワシントンDCのジョージタウン大学で中国史と日本史を担当し、ローマのイエズス会古文書館の文書の研究をおこなっていたジョン・ワイテック教授に博士論文の指導をお願いしました。私が現在の研究が続けられるのは、こうした先生方の懇切丁寧な指導のおかげです。先生方は個人的にはフレンドリーで優しいのに、論文のことになったら鬼よりこわい「批評者」として徹底的に向き合ってくださいました。そうした経歴から、私の研究のキーワードは、「イエズス会史」、「ヨーロッパ16世紀史」、「日本キリシタン史」となりました。歴史を「むすぶ」とでもいいますか、なにか複数の領域を「むすび」「くらべる」ことによって、紡ぎ出される新たな視点を探すことが重要だと思っています。
すこし変わった専門をかわれて、2014年度の大河ドラマ軍師官兵衛のキリスト教考証を担当しました。キリシタン時代の礼拝堂の仕組み、所作、儀式の考証をしたのは面白い体験でした。2010年度の龍馬伝でも「キリシタン」の作法を考証したことがあります。
時代区分的には江戸時代を扱うべきなのでしょうが、私の専門が戦国時代大きく重なっているため、江戸幕府にいたる全国統一過程を、15世紀初頭からさかのぼって考察することにしています。信長、秀吉、家康らが作ろうとした社会は、何を否定し、何をあらたに創り出したのか。その元々あった社会はなぜ崩壊し、新たな世を必要としたのかを考察しています。
単刀直入にキリシタン史とイエズス会を扱う講義です。カトリック修道会の一修道会であるイエズス会がなぜ16世紀以後世界各地で宣教を成功、あるいは失敗させたのかという世界史的問いが出発点にあることはいうまでもありません。ヨーロッパのイエズス会はもとより、中国や南米の宣教活動なども視野にいれながら、日本のキリシタン時代の文化交渉の変遷を見つめます。
神学部生を対象とした、ヨーロッパのキリスト教史概説ですが、最近は史学科生の受講が増えました。教義史、教会政治史なども扱いますが、むしろヨーロッパ中世史のロバート・サザンやピーター・ブラウン、スティーブン・オズモンドなどの社会史的アプローチによるキリスト教会の社会的考察を参考にしています。史学科生は学芸員課程などのためのクロスリスティング科目として履修可能です。
・単著 キリシタン信徒組織の誕生と変容(教文館、2003年) ・単著 時のしるしを読み解いて(ドンボスコ、2006年 ・単著 二十一世紀キリスト教読本(教友社、2008年) ・編著 100年の記憶:イエズス会再来日から一世紀(南窓社、2008年) ・編著 超領域交流史の試み(SUP 上智大学出版 2010年) ・単著 戦国宗教社会=思想史(知泉書館、2011年) ・共著 ヨーロッパの「兄弟会」(東京大学出版会、2014年秋刊行予定) ・2014年NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」キリスト教考証担当
私の複数の授業に参加する史学科生は当惑するかもしれません。私が、戦国時代の日本史、室町幕府の崩壊などを話していたかと思えば、4世紀ローマ帝国で行われたキリスト教論争を語っている。16世紀のマルティン・ルターの宗教改革とトリエント公会議の話をしているかと思えば、江戸時代の食生活のゼミをする。考えてみれば変な人物です。しかし、私の頭のなかでは、ヨーロッパ史、キリスト教史、日本史、戦国時代、イエズス会、キリシタンははっきりと結びついています。 現在の大学のプログラムで一般的にみられる、「日本史」「東洋史」「西洋史」の区別を全く無視しているからです。しかし、考えてみれば、日・東・西の区分そのものが「便宜的」なもので、絶対的ではありません。そのつながりの部分を理解するためには、ある程度、二つ以上のことを学ぶ必要があります。グローバル化の波は、私たちの「歴史学」にも押し寄せています。信長の時代、世界はどのように動いていたか。英国女王エリザベル一世と豊臣秀吉の宗教政策には、興味深い類似点があるなど、歴史の問いは分野を超えて広がります。そうした歴史学は、上智大学でこそ学べるものだと思います。だから、私がこうして皆さんの前で話しができるという現実もあるわけです。ともに、歴史のおもしろさを探究できればと思います。
by history-sophia
| 2014-08-02 01:50
| 教員・学部ゼミ紹介
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